リワーク支援(復職支援)
依存症や精神疾患をかかえ、その治療と休養のために一時的に休職している方のためのプログラムです。休職後の職場復帰に向けて段階を踏んで復職準備を支援していきます。
具体的には、生活習慣と基礎体力の回復、パソコン作業などオフィスワークを用いて意欲、集中力、作業能力の回復、対人スキルの改善、ストレス・マネージメントの習得、セルフ・ケアと再発予防の習得、などを行っています。
また定期的に、職場の上司の方や産業医、保健師との面談や、情報提供書の提出も対応しております。復職時期の検討にお役立ていただけます。
うつ病と依存症のリワーク
大多数の「リワーク」をする医療機関はうつ病を対象にしています。
確かにうつ病は自殺も多いし会社でもよく発病します。しかしながらうつ病と依存症とは大きな差はなく、例えばアルコール依存症でもよく自殺しますし、よく発病します。また再発の多いこともよく知られています。うつ病の「リワーク」の治療方法として、認知行動療法、SST・・・がありますが、依存症にも同様な治療法が使用されます。うつ病は依存症を、依存症はうつ病をよく併発します。このために治療法も似ているのかもしれません。しかしうつ病のリワークと依存症のリワークには少なからず差があるように思います。うつ病には抗うつ薬等の薬物が使用され、それは脳に一定の薬理作用を示します。依存症も(正確にはエタノールという薬物)を服用しますと、抗うつ薬よりはるかに早く、また強力な酩酊という薬理作用を示します。これからわかるように、依存症とうつ病等の合併症を治療する時は、エタノールという薬物をある程度制御できないと満足な治療はできないことが多いように思われます。
依存症と合併する場合の治療は、依存症と同時にうつ病を治療したり、依存症を先行して治療をしないと十分な治療になり難いことは良く言われています。依存症とうつ病には「リワーク」に対する治療目標にも若干の差があるように思います。
依存症のリワーク(家庭でストレスを感じる場合)
うつ病で休職した場合は、残業が多すぎた、会社のストレスが・・・等、本人が直接非難されるばかりではありません。 ところが、アルコール依存症やギャンブル依存症と言われる依存症の人が休職して家にいると、奥様としてみると「あなたが飲まなかったら」「あなたがパチンコをしなかったら」という気持ちを持ってしまうのは自然なことではないでしょうか。まして、休職中に奥様がパートに出ている間に飲酒したり、パチンコ屋に出入りするような事があると、奥様は本人を強く非難するようになり、夫婦の対話は成り立たなくなり家庭は強い緊張感に包まれます。そしてこの緊張に耐えられず、飲酒などの再発に至る場合も少なくありません。
実際このパターンがアルコール依存症の再発の約30%と一般的には言われています。(もちろん糖尿病でも、食事コントロールや運動等をするかしないかは本人にも責任があるように、アルコール依存症という病気だから本人に責任が無いと言うつもりは全くありません。) この様な状況を避けるためには、家族の疾病への理解、ポジティブな夫婦の対話が重要なことは統計上でも明らかですが、会社に行かない夫が妻と一日中家にいると問題も起きやすく、夫が家を出てリワークに行き、適度な距離感を夫婦が持つことも家庭の安定には大切です。
依存症のリワーク(ご自身に自信がない場合)
休職してしまいますと、給料は減るし評価は下がるし、プライドはガタガタになってしまいます。 復職する頃には、体は元気だし気力も充実していますので、これを取り戻そうと一生懸命に仕事に励むのですが、残念ながら、多くの依存症の人は過剰に反応してしまい、やりすぎて「ア~ア~疲れた・・・」と言っては、まず一杯。結果は残念な事になるのですが、これを自分で抑えることはかなり難しいようです。
またこれだけでなく、復職しても、自責感、自己嫌悪に悩まされますし、何度も失敗していますと職場で針のむしろになることもしようがないでしょう。このような時に、自分が断酒に向けていかに努力しているかを周囲にアピールできればいいのですが、自責感・自己嫌悪の状況ですのでアピールするどころか、職場では小さくなって隠れているのが精一杯です。そしてストレスがたまって、はい失職。これはワンパターンですがなかなか本人だけでは克服できません。もう一つは、簡単なことなのですが、飲酒に誘われた場合どのように断れるかです。SST等で復職前に繰り返し練習することは大切です。
依存症のリワーク(会社でストレスを感じる場合)
本人が病気を隠して復職した時は、ある酒造メーカーのように、日中飲み放題、売り上げUP、職員down、会社は繁盛では、職場のモラルを変えてもらう以外に方法は一般的にないように思います。
しかしながら、本人が病気であることをオープンにして復職する場合は、どのような形でどこまで職場に本人の情報を流すか(宴会は?残業は?)、事前に上司や保健婦さん等がクリニックに来ていただいて話し合うことは重要です。
また会社が、飲酒やそれを防ぐ行為に関心を持っているということを本人にわかってもらうように対応すること(※定期的に保健婦・産業医が面接する)も簡単ですが非常に大切です。