横浜市中区弥生町4-41
(犯罪事実) 被告人は、常習として、正当な理由はなく、 第1、平成○○年○月○日午後○○時○○分頃、○○都○○区○○1階○○店において、○○(当時○○才。以下「被害者」という。)に対し、持っていたデジタルカメラ(平成○○年○○第○○号符号1)を使用して、同人のスカート内の下着を撮影し、もって公共の場所において、人の通常衣服で隠されている下着等を写真機その他の機器を用いて撮影し、人を著しく羞恥させ、かつ、人に不安を覚えさせるような行為をし、 第2、同日午後○○時○○分頃、同所において、被害者に対し、同人のスカート下方に差し向け、もって公共の場所において、人の通常衣服で隠されている下着等を撮影する目的で、写真機その他の機器を差し向け、人を著しく羞恥させ、かつ、人に不安を覚えさせるような行為をした。
(証拠) ※括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードの検察官請求証拠の番号を示す。 判示事実全部について ・被告人の公判供述 ・被害者の警察官調書抄本(甲1、不同意部分を除く。) ・犯行状況再現報告書(甲4)、被害状況再現結果報告書(甲5) ・実況見分調書抄本(甲3) ・画像データ抽出結果報告書(甲2)、証拠品写真撮影報告書(甲6)、画像データ出力報告書(甲7)、証拠品解析結果報告書(甲8) ・略式命令謄本2通(乙5、6) ・デジタルカメラ1台(甲10 平成○○年○○第○○号符号1)
(適用法令) 1、罰条 (1)判示第1の所為 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例8条7項、2項、5条1項2号 (2)判示第2の所為 同条例8条8項、1項2号、5条1項2号 2、刑種の選択 判示各罪につき懲役刑を選択 3、併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第1の罪の刑に法定の加重) 4、刑の執行猶予 刑法25条1項 5、没収 刑法19条1項2号、2項本文(○○地方検察庁で保管中のデジタルカメラ1台(平成○○年○○第○○号符号1)は判示各犯行の用に供した物で被告人以外の物に属しない)
(量刑の理由) 本件は、被告人が、公共の場所で女性のスカート内を盗撮し又は盗撮しようとした事実であり、被害者の女性に与える不安や恥ずかしさなどは顧みずに、自らの歪んだ性的欲望を満たすことのみを考えた悪質な犯行である。被告人は、鮮明に撮影するためにカメラのフラッシュをたいて第1の犯行に及び、一旦被害者の近くを離れて画像を見て盗撮に成功したことを確認した後、被害者の様子を見て、再度盗撮できるのではないかと考えて第2の犯行を決意したというのであり、相当に大胆かつ執拗である。被害者の女性は、非常に恥ずかしい思いをさせられていて、調査段階で被告人の厳重な処罰を求めている。そして、被告人は平成○○年○○月及び平成○○年○○月に、スカート内の盗撮による本条例違反の罪で2度の罰金刑に処せられている上、被告人の使用するパソコン等には膨大な数の盗撮画像が保存されていて、被告人はこれらが自ら撮影したものであること、日常的に盗撮行為を繰り返していたことを認めており、盗撮行為の常習性は極めて高い。また被告人は、平成○○年○○月には、年少少女の着衣の上から陰部をなでるなどしたという本条例違反の罪で懲役6月、3年間執行猶予に処せられた前科も有する上、その執行猶予期間中も盗撮を続けて本件犯行に至っており、盗撮に対する抵抗感や罪悪感が欠如していたといわざるを得ず、再犯の懸念も否定し難い。そうすると、被告人の刑事責任は軽くはなく、被告人を実刑に処すべきとする検察官の求刑にももっともな面もある。
しかしながら、他方、被告人が、損害賠償の趣旨で○○万円を被害者に支払っていること、被告人が、本件各盗撮行為だけでなく、常習性の点も含めて素直に罪を認め、検査段階で常習性を裏付ける盗撮データの解析に協力するなどもし、保釈後には性嗜好障害の治療に当たるクリニックに通院して、専門機関の力を借りて再犯防止に取り組むなど、自らの問題に向き合い、真摯に反省していること、被告人の仕事上の関係者が出廷し、今後の仕事面からの更生への協力を約束していること、被告人の家族も、クリニックへの通院の確保を含めた監督に当たる決意を示していることなど被告人のために酌むべき事情も一定程度認められる。
そして、前記のとおり、被告人には、本条例違反の前科3犯があるが、盗撮による懲役前科はこれまでなく、痴漢による懲役前科は、執行猶予期間の経過から本件犯行までに約2年9か月が経っている。 これらの事情も踏まえると、本件では、被告人の刑事責任を基礎付ける前記事情に照らして長期の執行猶予は不可欠であるものの、刑の執行を猶予し、社会内における更生の機会を与える余地があると考えられる。そこで、主文のとおり判決することとした。なお、弁護人は、保護観察付き執行猶予をが相当であるとの意見を述べているが、被告人は、民間のクリニックで治療プログラムを受けており、今後これを継続する意向で、弁護人もこれを前提としている上、クリニックへの通院の確保は、被告人の家族が公判廷で協力を約束していることに鑑み、保護観察には付さないこととした。
(求刑 懲役1年、デジタルカメラの没収) 平成○○年○○月○○日 ○○裁判所刑事第○部 裁判官 ○○ これは謄本である。
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